#6 嵐の夜の夢(行永の場合)その2
自分を責めて責めて泣いて、
あまりにも悲しすぎるので、
消えてしまいたい……
しばらくすると不思議な子供が現れた。
ネコ耳??
うううん、なんか違うけど、それっぽい。
しっぽは長くてフサフサ。
髪と目の色は金色。
髪の毛は秋の田んぼに実る稲穂のような感じ。
(ちょっと昔っぽい表現の仕方だったかな)
目は一重、
やさしい印象の一重であどけない。
私と同い年ぐらいの女の子。
「……さま!!
山に柿が実ってましたからとってきました!!
皮むいて食べましょう!!」
人懐っこい子供の声。
「おイネ、この柿は渋柿だからむいてすぐには食べられないよ」
若い男性の低くて響く声。
「ええええええええ!!」
「すぐには無理だけど、焼酎かなんかちょいとつけて
しばらくすれば渋がとれて甘くなるよ」
「……さまは物知りなんですね~~!!」
純朴な笑顔。
その笑顔を向けられた若い男性もつられて笑顔。
おイネの頭をなでる若い男性。
おイネはますますうれしさいっぱい!!
はちきれんばかりの笑顔。
お耳としっぽがうれしそうに揺れる。
「それではちょっと台所へ行ってまいります♪」
頭をペコリとさげ、
台所へ向かうおイネ。
そんなおイネがかわいくて、
かわいくて、、、なんか私も見とれてしまった。
癒し系キャラって感じ。
若い男性の心もだんだんと明るくなり、、、
気分転換できたみたい。
おイネが去った後、
黒部(クロベ)という長髪黒髪で黒目の美青年が登場。
淡々としたクールな印象。
「行長さま、なにか御用でございますか?」
見た目はクールだけれども、優しい声。
行長(ユキナガ)っていうんだ、この若い男性。
みんなに”行長さま”って呼ばれてるから、
偉い人なのかなぁ?
「ああ、すまないね、黒部。急に呼び出したりして。
君にね、頼みたいことがあるんだ」
「おイネのことですか?」
「君にはお見通しだね。そうなんだよ」
あははっと笑う行長さん。
「仰せのままに」
真面目に答える黒部さん。
ものすごく礼儀正しい人なのね。
「いつも勝手ばかりいって、すまない」
「それでいいんですよ、わが君」
愛しそうに行長さんを見つめる黒部さん。
こ、、これは一部女子の間で人気のある
アレなのかしら。
お友達のゆりちゃんがお姉ちゃんから借りたといって貸してくれた
あのアブナイ本の展開に似てる。
主と従者?
忠誠を誓う者と誓われる者。
思考が止まる。
黒部さんの瞳に映る行長さん、、、
そのお顔は、、、どこかで見たような……
お父さんに似てるっ!!!
「わが君よ、永遠の忠誠をお誓いします」
「ありがとう」
行長さんはにっこり微笑み、
黒部さんの唇に自分の唇を押し当てた。
こここ、、、これってキス?
美青年同士のキスシーンだから、
見苦しくはないけれど、
なんか違うような気がする。
普通、男女がするものでしょ。
なんでなんで!!!
どうしてこういう展開になるのよ。
私もゆりちゃんのお姉ちゃんと同じ種類の人間になっちゃったのかしら?
まさか、、、、それはありえない!!
これは夢よ夢!!
でも、夢に見るなんて、、、ねぇ。
よっぽどあの本が強烈だったってことよね。
強烈すぎて刺激が強すぎて、、、
変な夢を見てるに違いない!!!
そうよ、そうよ、そうに違いないわ!!
なにか、違うことを考えよう。
「行長さま!!」
おイネの声を思い出す。
かわいい女の子だった。
ネコ耳がかわいかった。
フサフサしっぽ触ってみたい~!
あの子とならいいお友達になれそう。
おイネの声と黒部さんの声が交互に思い出される。
「行長さま!!」
「わが君よ、永遠の忠誠をお誓いします」
かわいい声と優しい声。
なんか癒される。
さっきまでの自虐的な気持ちから、
前向きな気持ちに切り替わる。
自分を奮いたたせる。
私 は 最 上 行 永 よ !!!
日本的絶滅した美少女の生き残りといわれる私が、
気持ち悪いおじさんの1人や2人、
あしらえないワケないじゃない!!
私はマサ兄を守る。
もちろん、自分も守る。
それで決まりよ!!!!
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