#1 それは嵐の夜だった(雅隆の場合)
それは嵐の夜だった。
両親が不慮の事故で亡くなり、親類もいないオレと妹。
アヤシイいかがわい
遠縁の中年ジジイに引き取られることに。
その中年ジジイの妹を見る目つきのヤバイこと。
オレはたった一人の可愛い妹を犠牲にしてまで、
高校に行きたいとは思わない。
思えない。
ここは勇気を出して、2人で逃げ出すしかないのかなぁ。
オレ、最上 雅隆(モガミ マサタカ)、現在16歳、高校2年生。
妹、行永(ユキエ)10歳、愛称はユキちゃん。
兄のオレはごく普通の外見を持つ、いたって普通の高校生だが、
妹は、、、これまた、オレの妹かよと信じられないくらいの美少女。
アイドルにならないかと勧誘されることも多数。
美形の血筋といわれていた父親似なんだろうな~
スラリとした肢体、子鹿のようなつぶらな瞳。
腰まである艶のある漆黒の黒髪はサラサラで、
日本的絶滅した美少女の生き残りといった印象だ。
声は柔らかで鈴のように愛らしい。
なんかありきたりの表現しか使えない自分が悲しいぜ。
誰か、、、誰か、、、誰か!!!
オレを助けてくれ~~~!!
両親の形見は父親の家に代々伝わるという
このぼろっちいペンダントのみ。
銀行にある積立貯金の通帳とか現金は
後見人が管理するといって、
持ち去られてしまった。
一軒家の持ち家の権利書も。
ううううう。不覚にも涙が出てくるぜ。
こういうのを四面楚歌、
四方八方ふさがりっていうのかな。
実体験はしたくなかったぜ。
握り締めていたペンダントの薄汚れた緑色の石に、
オレの涙がこぼれた時、
ヘンは声が頭に響いた。
「助けて欲しいのか?」
オレ、頭がおかしくなったのかもしれない。
精神的にいっぱいいっぱいで、
幻聴が聞こえるようになったなんて。
で、つい、声に出す。
「助けて欲しい、助けてくれたらなんでもする!!!」
「その契約忘れるなよ」
はぁ??オレ、頭おかしくなっちゃったよ。
涙で曇ったオレの目に映るもの。
それはやたらめたらキレイな人間。
ユキちゃんも親父も現実離れした麗人だが、
これは、、、また、、、極上の、、この世の者とは思えない。
髪は白金色のストレート、瞳はヒスイ色。
若葉の緑。
肌は抜けるように白く、性別は不明。
「そなた、名は?」
名前を聞かれても声がでない。
オレ、マジやばい!!
「大丈夫か?最上の子供よ」
やさしくオレの頭を撫でる。
「……オレは最上雅隆だ」
「そうか、お前の願いは?」
「妹と2人、誰の力も借りずに平和に生きていきたい」
あの中年ジジイの毒牙からユキちゃんを守らなくては。
オレが守らなければ誰が守る!!
「ほほう、、なるほど」
性別不明の麗人はオレを見つめ、こう言った。
「私のことは翠月と呼ぶがいい、雅隆。
お前の願いを叶えよう。
……………それでは契約の証として」
ぎゃ!!!なんだこの展開!!
オレはファーストキスを奪われてしまった。。。。
まじかよ。
あっちゅう間じゃん。
オレ、抵抗できなかった。
トホホ。
「今夜はもうおやすみなさい、雅隆。
目が覚めれば状況は変わっているだろう」
オレの反応を気にもせず、
そういって翠月は姿を消した。
これはオレの幻覚かもしれないな。
うん。そう、幻覚に違いない。
オレはぶつぶつ独り言をいいながら、
シャワーを浴び、
ユキちゃんが健やかに眠ってるのを確認して、
床についた。
どうしちゃってる自分?
オレ大丈夫かな??
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